【完】向こう側の白鳥。









「……早くいかなきゃ。」



先輩を待たせてはいけない。





机の上の、いつもの髪飾りを手に取って家を出た。





ドアを開ければ、先輩が優しく微笑んで迎えてくれる。



まるで私を愛してるかのような、その微笑み。



今はそれが、酷く辛い。





一ノ宮先輩も浴衣だった。



グレーに、かすれ縞の入った殆どの無地のもの。





先輩の瞳の色とお揃いだと思った。





「……浴衣、似合ってる。」





赤い頬を袖で隠して、少し震えていた先輩の声。





……それが例え嘘でもお世辞でも、とても嬉しい。





「ん。」





目の前に伸びて来た、私より大きく綺麗な手に指を絡めた。