先輩が私の腕を引いた。
体が傾いて、全身ずぶ濡れの先輩の胸へと飛び込む。
背中に回された手が、少し不安そうに私を抱きしめた。
「会いたかった……。」
耳の少し上で聞こえる声。
心の奥から、本当に安心したような声。
……私には彼を、先輩を、突き放すことは出来なかった。
「……私も、会いたかったです……。」
先輩の背中に腕を回して、先輩が私にしてるように抱きしめる。
二人ともずぶ濡れなのに、不快感は無かった。
「一ノ宮先輩に、会いたかったです……。」
戻れないと感じた。
きっと、遅かったんだと思う。

