「い……、一ノ宮先輩!?」
ドアを開けた菜子ちゃんが、驚きの声を上げる。
「……ごめん、大桑さん。白鳥さん借りるから。」
一ノ宮先輩が菜子ちゃんに言った言葉はそれだけ。
玄関に入って来た先輩は私の手を掴むと、早々にその場から連れ出した。
先輩に掴まれたところが、ほんのり熱い。
相変わらず優しい手つきで、掴まれた腕を痛いとは思わなかった。
「……大桑さんのとこにいたんだ?」
菜子ちゃん家を出て、先輩が連れて来たのは近くの公園。
鞄も傘も菜子ちゃん家に置いて来てしまったから、私達はずぶ濡れ。
道行く人達が、怪訝そうな目で私達を見てくる。

