【完】向こう側の白鳥。









『にしても先輩、絶対柚子ちゃんのこと好きだと思うのになぁ。』





菜子ちゃんの言葉を思い出して、勢いよく首を振る。





こんなに格好良くて、学校一人気の一ノ宮先輩に好かれる理由が私には無いから。





「……俺の顔になんかついてる?」





見すぎたのか、私の視線に気づいた先輩がこっちを向いた。





「あ、いえ……。」





慌てて視線を逸らせば、先輩は「そう。」とだけ返事して。



視線を私から、私の手へと移らせた。





「……重そうだけど。」



「え?」





私の両手にはスーパーの袋。



鞄は肩にかけ、携帯は先輩の前でメールするわけにもいかなく、ポケットに仕舞ってる。