【完】向こう側の白鳥。









その瞳が訳ありなことを語っていて、私は別の意味で鼓動が高鳴っていた。





きっと一ノ宮先輩からしても、沢渡先輩からしても、その事実は酷く重いもの。



けれども、知りたい。



どうして私は、先輩の傍にいてはいけないのか……。





「本当に、馬鹿じゃねえの……。」





もう一度同じことを呟いて、沢渡先輩は私達が来た道とは逆の道を歩いていった。





小さくなって見えなくなるまで、一ノ宮先輩は沢渡先輩の後ろ姿を見つめ続ける。



沢渡先輩の背中は、酷く脆そうに見えた。





「ごめん、竜……。」





先輩の口から零れた呟きに、私は聞こえないフリをした。