【完】向こう側の白鳥。









「お前にも俺、言ったよな?」





沢渡先輩の厳しい視線が、先輩から私へと移る。





「紫苑には近づくなって。……それとも何? この耳は飾りだった?」





馬鹿にしたように笑い近づき、私の耳たぶへと触れる。



それを見た一ノ宮先輩が、勢いよく沢渡先輩の手を払った。





「竜、この子に触れるな。」





“触れるな”



先輩のその一言が嬉しい。





「はっ……馬鹿じゃねえの、お前ら。」





今度は馬鹿にしたようにじゃなく、正真正銘馬鹿にして、私と一ノ宮先輩を見てきた。





沢渡先輩は嘲笑う。



まるで一ノ宮先輩のように、切なげに、儚げに……。