「紫苑、何してんだよ……。」
突然にも聞こえてきた声に、一瞬息が詰まる。
あの無駄に長い信号のある横断歩道を渡って、こっちへと来る人。
目立つ赤髪に、いくつか開けられた耳の穴。
手には煙草とコンビニの袋。
コンビニ袋の中も、煙草やお酒ばかり。
一度先生に見つかって、厳しい罰でも受けた方がいいと思う。
「竜……。」
「沢渡先輩……。」
一ノ宮先輩の従兄弟、沢渡先輩。
「紫苑、俺は何してんのって聞いてんだけど。」
「…………。」
一ノ宮先輩と沢渡先輩の間に渦を巻く不穏な空気。
原因が私だと言うことも、当然わかっていた。

