「凜?」



『へっ?あっ…ごめんごめん。K駅だよ』





いつの間にか、琉希くんのこと見つめちゃってたみたい。



私は慌てて答えて、琉希くんの様子を窺う。





「お、まじで?んじゃ近いかも!俺はT駅だよ」





琉希くんはニコニコと笑顔。





よかった。


私の心情には気付いてないみたい。





もしかして、天然…?





『T駅ってことは…二つ先かぁ。近いね!』





自転車で行き来できる距離。



学校からも割と近いところに引っ越してきたようだ。





「んね!びっくり」





電車に揺られながら会話を弾ませる。



私の最寄り駅に着くまで会話は途切れることなく、私達はずっと笑い合っていた。





話しやすい人だなぁ。


面白いし。





この時間は嫌いじゃない。



もっとたくさん、琉希くんと喋っていたい。



不覚にも、この時の私はそう思っていた。





私の過去に何があったのかを思い出せぬまま……。