夜。

駅前で、一人ただずむ女性がいた。

ガムだ。

ガムは自分のハンドバックのチャックを空けて、中身を見た。

中には、ごつめのナイフが入っている。

「直実」

後ろからかけられた声に、ガムは振り返った。

声の主は、もちろんニートだ。

「来たわね。行きましょ、とりあえず今日はホテルに一泊して……」

ガムはニートの手を引こうとしたが、振り払われた。

「直実……俺はもう、直実とはいられない」

「…何故?」

「好きな人ができたんだ。俺は、その人を守るために、変わりたい」

「あんな女のどこがいいの?」

ガムは思い切りニートを睨んだ。

「あんな女って……知ってるの?」

「キャバの事でしょ」

「なんで…」

まさか、バレているとは思わなかった。

「様子見てればわかるわよ。付き合い長いんだから。いつの間にたぶらかされたのよ」

「俺が勝手に好きになったんだ、キャバは関係ない」

ガムはニートの両肩を言い聞かせる様に力強く握った。

「…あんた、あの子の正体、知ってるの?デリヘルなんてやってるのよ!?知らない男と、たくさんセックスしてるのよ」