悪者女子の恋心!

「お母、さん…?」


「…話が、あるの。もう一回、奥で話せる?」


「咲、俺たちここでお茶菓子買ってるね」

「俺もマミちゃんとユカリちゃんに買っとくね♪」


「分かった。ありがとう」


お母さんについて応接室に戻り、ソファーに座る。



「咲、大きくなったわね」

どうしよう、涙まだ止まってない。


「うん、うん…っ」


「今まで、ごめんなさい…」


耳を疑った。


お母さんが謝った?


…何で?



「言い訳するつもりは無いけど、聞いて欲しい。あの頃…お父さんにも浮気されて私はおかしくなってた。咲を…手放した。本当に大事なものを見失ってた」


大事な、もの?


「アパレルの仕事も上手くいかなくなって…愛せるものも愛してくれるものも失った。失って初めて、気づいたの。どれだけ…どれだけ咲が私にとって大事だったのか」


「じゃあ…じゃあどうして迎えに来てくれなかったの?ずっと、」


「私が弱かったからよ。自分が突き放したくせに寂しくなって…会う権利なんかないと思ってた。他の人と一緒になって子供が産まれたとしても、あんた以上には愛せないからよ…」



ああ、せっかく泣き止んで来てたのに。


涙がまた止まらないじゃない。


「あのお菓子、「咲のことよ」


お母さんがふっと笑った。

「あれで咲が気付いてくれないか…って馬鹿みたいに勝手に願ってたのね」


釣られて私も笑った。



「咲…私から言えることじゃないけど。状況が落ち着いたら、また一緒に暮らさない?」


「勿論いいに決まってるじゃない…」


笑いながら、泣いた。


「じゃ、透真と万雄が待ってるから帰るわね」


「うん、気をつけるのよー」


今まで何も無かったかのように別れた。


まだ販売の仕事があるというお母さんに手を振り、部屋を出る。