悪者女子の恋心!

「うわとは何よ」

電話を切ったのを確かめてから、抗議を申し入れる。

「どうだっていい、帰るぞ。お腹空いた」


「ぷっ」


お腹空いた、だって。

ギャップが激しいわねー黒王子。


「何笑ってんだよ」

「いいえ?笑う権利も下さらないのかしら黒王子さんは」


調子に乗ってからかうと凜が不機嫌MAXの顔をした。

「王子じゃねぇ」


そう言って自然と繋がれたあたしの右手が熱を帯びていく。

顔もちょっと熱い。

走って髪が乱れてないといいけど。

可愛いあたしで居たいもの。

気になってしまうのはどうして?


「まぁ…凜がすることは王子様っぽいけど」


焦りを隠そうとして言った言葉は可愛くなくて、恥ずかしい。


あたし何言ってるの!?


「べ…別にカッコいいとかそういう訳じゃっ」


突然繋いだ手がギュッと握られた。


「王子は誰にでも優しいじゃん。俺は誰にでもこういうことしない」


窓から差し込む光のなかで凜がフッと笑う。


そんなこと言ったら勘違いしちゃうじゃない。


「勘違いするわよ、そんなこと言ってると」

「勘違いしたら?」


「そっそれどういう意味…」

顔、赤くなってるかも。

だってこんなに熱い。


「内緒」






そう言って唇に人差し指を当てて笑う凜が途方もなくカッコよく見えたのは、きっと気のせいだ。