だけど、神田君はただあたしたちの前から姿を消してしまっただけではなかった。


神田君さえ考えていなかった、思わぬ置き土産をくれたのだ。


それは彼女の変化だった。


彼女は神田君がいなくなったその日から元気を失ってしまった。


今までクラスに聞こえて来ていた笑い声や話声が、パタリと消えたのだ。


普段の元気をなくしてしまうくらい、彼女は神田君が好きだったのだ。


あたしが神田君を意識するよりも、ずっとずっと前から神田君だけを見ていた彼女。


そんな恋の経験がないあたしには、彼女の辛さを理解することはできなかった。


辛さを理解できないあたしは、パタッとイジメが止んだことも最初は理解できていなかった。


神田君がいなくなった途端、彼女たちはあたしに興味を示さなくなり、こっちがビクビクしていてもなにも仕掛けてこなくなったのだ。


それでも、放課後になればまた意地悪されるかもしれない。