祐也はクラス替えをして、二回も席替えをしたにも関わらず、私の後ろの席に常に居るヤツ。

何処に居ても目立つ赤い髪に、整った顔立ち。

「昨日の女がしつこくてさ~。眠らせてくんねえのよ」

「うぇ。きたねえ話すんな」

「俺にそんな事言うのはお前ぐらいだよ」


祐也に悪態を吐き、溜め息。
女にだらしないヤツはろくでもねえよ。
顔がいいから一発?みたいな感覚か?

はあ。世も末だ。


ガタガタと椅子を引き、後ろに祐也が移動しているのが分かる。


「寝るの?」

話しかけたのは、祐也宛。
祐也もそれをしっかりキャッチした様で。


「当たり前だろ。何麻衣ちゃん添い寝ご希望?」

「一回死ね」


あはははは!とセナが高らかに笑い声を上げ、私も瞼を閉じた。


――昨日の知恵さんの声が耳から離れない。


“あなたの顔思い浮かべると、私震えが止まらない”


眠れずに夜が開けた。
午後は私も寝ようかな。
帰ったら荷造りしなきゃ……

ゆっくり眠りに落ちていきながら、セナの「あんまり無理すんな」って声が、自棄に温かく感じた。