「お、風呂に……」
声が少し震えていたのかもしれない。
私が話した数秒後。
電話口で、フッと笑った声がした気がした。
『そうなんだ?ごめんね。少し怖い言い方しちゃったね』
「ううん……」
良かった。
機嫌は直ったみたい。
『今暇になっちゃってさ。麻衣の家行っていい?』
「……っ!」
ヤバイ。今、雄大に響を見られたら……っ!
目が見開き、手に汗をかく。
Tシャツの裾を力強く握ると、願いを込めて口を開いた。
「今日ね、友達とバイト先で会っちゃって。そのまま家に居るの……」
上手く、伝わっているだろうか。
嘘は言ってない。
強いて言うなら、私と響は“友達”ではないけれど。
もうそれは思い込みの問題で、私が友達と思えば、友達なんだ、と。
無理矢理自分を納得させた。

