青空の下月夜に舞う







「何もねえな」






文句があるなら出ていってくれても構わない、って言葉は、寸前で飲み込んだ。


響が入った裏道は、偶然にも私がバイトに行く為に見つけた、いつも使っている近道で。

学校と、バイトにしか、殆ど足を運ばない私が、この辺で隠れる場所なんて見当たらない。


私だけ帰って、響だけ捕まるかも、と。
それが少しだけ怖く感じた。


家の中の灯りを付けると、お邪魔します、なんて言葉は勿論響の口から出てくる事はなく。

中にずかずかと上がる。


「あ……」

思わず漏れた一言。

それを拾った響は、私に視線を向けた後。


視線の先にあるのが、自分の手だと気付いた様で。


「やべ。切れてんな。歯があたったか?」


まるで世間話の様に。
血がついている手を、水道の水で流した。