青空の下月夜に舞う


「5番にこれ2つね。26と17もあるから早くね」

「はい!」


忙しさはピークの8時前後。

腕時計はしてるけど、確認する暇があまりないくらいフル回転。

家族や、サラリーマン風の人達が多いけど、年齢層は様々で。


「ありがとうございました!」

「ごちそうさま」


笑顔で“ごちそうさま”って言われると、嬉しかったりする。

……あ、何か私女子高生っぽくない。


やば。立ち止まってる暇なんかないんだ。

くるりと向き直り、さっきのお客さんのテーブルを片付けに行こうとした時。

新しいお客さんが入ってきて……


「いらっしゃいませ、何名さ、ま……」


言葉が止まる。
だって……


「今5だけど8になる」


忘れないよ。この顔。

さっき銀行で会った人が、ダルそうに後ろに立っていたから……


「お姉さん?聞いてる?」


私に話す金髪で髪の長い男の人が、私の背に合わせて少し屈み、覗き込む様に私の顔を見た。


「わ!すいません!喫煙席、禁煙席ございますが……」

「きっつえーん」

「……それではあちらの席にご案内します」


席に通した後、パネル操作を指示してその場を立ち去る。



――その後ドキドキしたのは一瞬で。
案内したテーブルに、私が行く事はなかった。

後から来た3人を通したのも私ではなく。

ホールを動き回る私の他の女の子達は少しはしゃいでいる様に見えたけど。

目まぐるしく回るホールは、余計な事を考える暇さえ与えてくれなかった。