青空の下月夜に舞う

銀行のキャッシュカードコーナーに入ると、1万円を引き出して、財布に閉まった。

自動ドアを潜りながら、小銭がいくらか数えていると、


――ドンっ!


「わ!ごめんなさい……」

じゃらじゃらと小銭が落ちた……


私。ではなく相手が。


「ごめんなさい!」

直ぐにしゃがみこんでお金を拾い集める。

見た感じ、もうないよね。

目で確認した後、落とし主に小銭を手渡しながら、また謝罪の言葉を口にしようとした。


「……わりぃな」

「いえ……すいません」


顔を上げた男の人に一瞬見とれた。

二重の切れ長の目。
筋の通った鼻。
赤く、薄い唇。

歌舞伎の女形の様に中性的。
色白な肌は妖艶で。

少し長めの髪は風に靡き、それさえも綺麗だと思った。


「金」


しばらく固まっていた私。
低く、甘さを感じる声。

その声に我に返った私は、「ああ!」と間抜けな声を出し、差し出された細くて長い指に、かき集めた小銭を乗せた。