「あ。ごめん、何て言うか……返すも返さないも、何て言うか……」


言葉を選びながら話す黒川君。

一刻を争うような事態だ、と認識しているのか、しびれを切らした翔琉が、


「ああもう、とりあえず、絶対後で埋め合わせするし、ごめんな!」


言いながら自転車をこぎだす。


ぐらり、と身体が揺れて、反射的に翔琉の背中を掴む。


ちらり、と見た黒川君は、何故かさっきよりよっぽどいい表情をしていて。


訳が分からなかったけど、とりあえず今は、病院へ向かうことが優先事項。


後の事は、追い追い落ち着いたら考えていくということで。


「飛ばすからな」


翔琉の声が聞こえた気がしたけど、あっという間に風にのって後ろに流れてしまった。


お姉ちゃん、なにがあったの??