カイが、上機嫌に 私が聞いたこともない鼻歌を歌う。 「〜♫〜♫」 カイと屋上に居座っていると、 いつも急速に流れていく時間が ゆるりと進むような気がするのは、 なんでだろう。 空想野郎は嫌い。 夢想バカも想像好きも妄想脳も嫌い。 だけど、カイといると、 心にはびこった何かが、なんとなく ほぐされていくような感覚がする。 …不思議と、居心地がいい。 膝を抱えて、すっかり夕闇に侵された 街に見入っていた。