…普通なら、父親をけなして、 最低と言われてもおかしくはないのに。 カイはけして、そんなことは言わない。 ただ、一言。 「父親は夢をみてるのに、 千咲希は、空想をしないんだな」 と、言った。 「…当たり前じゃん」 私は無愛想にそう答えて、 膝を抱えて、目をつぶった。 …カイといると、 たまに思うことがある。 救いようのない空想野郎なのを 見逃したとしても。 カイは私の知る男子高校生とは、 どこかが、違う。 …夕闇が、ゆっくりと、迫ってくる。