10月の下旬。 時刻は午後5時3分ほどだろうか。 帰宅部の私は通学カバンを 肩にかけたまま、とあるマンションの 屋上に登る。 高校に入学してすぐに見つけた、 私だけの場所を目指して。 ふと見上げれば、 空の2分の1を灰色の雲が覆っていた。 私以外に、知る人はいない場所。 秘密基地なんて、 そんなロマンチックなものじゃない。 私だけ、という空間が落ち着く、 ただのマンションの屋上だ。