家に帰ると、

もうお母さんはいなかった。



少し心の中を

風が吹き抜けたような気分になるが、

あまり珍しいことでもないから、

慣れている。



靴を脱いでリビングに入り、

ダイニングテーブルに視線をやった。



今日は…唐揚げか。



いつもラップをかけたお皿のそばに

添えられている手紙に、目を向ける。



『今日は唐揚げです。

揚げ物は苦手だけど、頑張っちゃった。

温めて食べてね。

大好きだよ。

――お母さんより』



…ラップを剥がし、

唐揚げを皿ごとレンジに入れ、

セットする。



唐揚げが温まるのを待ちながら、

カイが『星屑』と呼んだ金平糖の味を

振り返っていた――。






…優しくて、おいしかった。