「…バカみたい」
どうしても、
そういうありえもしない絵空事を
聞かされると、どんなに賢い偉人でも、
バカだと決め込んでしまう。
それが、空想に逃げ込んで挙句に死んだ
父親を持つ私の、価値観なんだ。
私が、夏崎カイに伝える気もなく
ボソリとつぶやいた言葉は、
風に流れて消えていった。
なんだか肌寒い。
…そう。
私は、頑張れば叶う夢を見ることを、
決して非難したりバカになんてしない。
絶対に現実に“あり得ない空想”が
嫌いなんだ。
夏崎カイの言う、
ペガサスが存在する、
という妄想のように。
もうすぐ空は、群青に塗りたくられる。



