玄関の扉が開いた音がした。 「お母さん、行ってくるねー…」 「いってらっしゃい」 …1人きりの家には、もう、慣れた。 ダイニングテーブルの上に置かれた、 ラップ包みの焼き魚。 そばには、達筆に書かれた書き置きが、 ポツンと寂しげに自分を主張していた。 『今日は焼き魚です。 冷えててごめんね。 温めて食べてね。 大好きだよ。 ――お母さんより』 …大好きだよって、 なんで毎日 書く必要があるんだろう。