「ケンジさんが亡くなって、

大変だねえ、マリさんも」



「無職の酒飲みだったらしいよ。

奥さんを働かせて千咲希ちゃんを

放って、何をしてるのやら」



「そんな予感がしてたから、

マリさんとの結婚に反対したのに…」



「マリも千咲希ちゃんも、気の毒ね」



マリっていうのは、お母さんの名前。



ケンジっていうのは、父親の名前。



だんだんと記憶が蘇ってくる。



8歳の頃はこの会話の意味が

わからなかったけど、今は、その裏に

含まれた皮肉まで読み取れた。