そしてまた、場面は移り変わる。 …鏡の中みたいな、 不思議な空間を通っていく。 やがて見えたのは、黒い服を着て、 十何人の大人たちの集まりから 離れて立っている、私だった。 大人たちは、 棺のようなものを囲んでいる。 ――ちがう、棺だ。 父親の横たわる棺。 中はなぜかモヤがかかっていて、 よく見えない。 胸にかすみ草と白い百合の花束を 抱いて、棺を見つめる私。 ひそひそと、徐々に席に戻っていく 大人たちの声が、耳の中にこだました。