「ど、どうしたの……」


先輩が慌ててるのがぼやけた視界の向こうに見える。


美穂さんが先輩にしていたように僕にハンカチを差し出す。


でも僕はそのハンカチを受け取らなかった。





とめどなく溢れ出す涙を拭うこともせず、僕は二尺玉が描く光の軌跡を眺め続ける。


何かを察したのか美穂さんとウインピーがこちらに中腰でやってきた。


僕は彼らが口を開く前に立ち上がる。


「ありがとうございました」


僕はそう言うと、三人に対して深々と頭を下げ歩き出した。


後ろから怒号に近い美穂さんの声が聞こえたが、僕は振り向かなかった。


先輩が泣いたりしてるんじゃないかと思うと胃の辺りがきゅうと収縮したが、ぐっと堪えて足を交互に動かすことだけに意識を集中した。