ブランコ。

(もう……少しだ……) 


僕は指先に力を込めて精一杯伸ばす。


何度か先輩の指に触れたような気がする。


さらに、非難の声を無視して、無理矢理膝を人の群れに突っ込んで手を伸ばす。





(握れた!)


柔らかくすべすべとした、細くて少し冷たい手を握った。


僕は自分の手のひらが汗で湿っていることも忘れて夢中で掴んだ。


離さないように。壊さないように。





先輩と目が合う。


一瞬、どちらに行くべきか二人の間で無言のやり取りをしたような気がする。


だけど、その躊躇した一瞬の間が僕らを引き離した。


間を通る誰かが僕らの手を跳ね上げていってしまったのだ。