「すみれさんが僕のために作ってくれたんでしょ?」

「あ、うん。そうだけど…」

「だったら当然僕のだよね?このクッキー」

「…でも、好きじゃないとやっぱり美味しくないかもしれないし、その、やっぱり甘いかも…」

「関係ないよ、どんなだって。だって気持ちが大事なんだから」



“僕はすみれさんの気持ちを今貰ったんだよ”




「…ーーってね、言ってくれたの!」

「へぇ」

「それで食べてくれてね、美味しいって!また作ってねって言われちゃった!」

「…で、その尊いクッキーの余りをあたしは今頂いたと、そういう事な訳ですね」


いつもの居酒屋でいつもの琴乃と。拓也君に渡したものと同じように私なりに可愛くラッピングしたそれを手渡すと、やたら驚いた顔で琴乃がどうしたの⁈ と食いついて来たので、ここに至る経緯を説明した所である。

そこに変なとこなんて一つも無かった…はずなのに…可笑しい。ゲンナリした顔の琴乃さんが今目の前にいらっしゃる。しかも琴乃さんの分を余りだなんておっしゃってる。