小悪魔的な彼と悲観的な彼女



思わず顔を上げた。いつの間にか話しながら顔を伏せてしまっていたみたいで、まっすぐ私を見ている拓也君の存在に今気がついた。


「そうやって人の分の責任まで背負っちゃって、それでもちゃんと毎日を乗り切って一歩づつ今日まで進んできた、それが僕の知ってるすみれさんだよ」

「……」


人の分まで、背負ってる…


「すみれさんは人のせいに出来なくて、関わらなくて済む問題も放って置けなくて、だから断る事も逃げる事も出来なくて一杯になったそれを片付けてる内に、気づいたらそこに居たんだ。それに気づいたのが29歳の誕生日だった。その限界に僕が立ち会えて、だから覚えていて貰えて今一緒に居る、そういう事だと思ってる」

「……」

「確かに今のすみれさんの責任はすみれさんにあるとは思うけど、でも選択出来る余地も与えられ無かった、そういう風に僕は感じるんだ。背負う人間がいれば背負わせる人間も居るから」

「……」

「みんなが上手く手を抜いて生きていく中、そこを真っ直ぐ不器用に生きて来た。どんなに嫌でも逃げ出さないで受け止める事が出来る、そんな素敵な信頼出来る大人…それが僕の知ってるすみれさん」


“僕の大好きな、すみれさんなんだ”


そう私を語る拓也君は、熱を帯びた熱い瞳で私を見つめていた。そこにあるのは私からしたら、私へ向けられるなんて事は程遠い感情。ーー尊敬、それが一番しっくりくるような、そんな気がした。