小悪魔的な彼と悲観的な彼女



そう言って拓也君は、恥ずかしそうに、少し言い辛そうにしながら笑って、私から目を逸らした。そして…ポツリぽつりと、話し始める。


「始めの印象は…さっきも言った通り、大人の象徴…というか。僕とは違うなぁ…とか、こうはなりたくないなぁ…とか。…正直、そんなに辛いなら辞めれば良いのに、大人は皆そうだよなぁ。よくやるよなぁ、なんて」

「…本音だね」

「うん、今となれば子供過ぎて最低だよ。…でもさ、それがすみれさんと話すようになって、気持ちを聞いて、その理由を知って…だんだん大人の象徴だったすみれさんが、大人として生きるすみれさんっていう印象に僕の中で変わっていったんだ」

「…?」


その言葉に首を傾げてみると、拓也君と目が合った。そして彼が、小さく笑う。


「話すとね?普通なんだ。言う事もそうだし、泣き方だって子供みたいに泣いたりして。でもさ、それでもやるんだよね。それでも続けるし、それでも頑張るんだ」

「…え?」

「耐える事。懸命に生きる事。現実を受け入れる事。それをすみれさんから知ったというか、すみれさんから見たというか。辛い辛いって泣くくせに、それなのに放ったりしないんだ。仕事の事も、自分の事も。それでも自分の出来る事を精一杯こなしていくんだ」

「…そ、そんな事」

「そうだよ。そうだし、それが大人なんだって思った。責任感ってそういう事なんだって。僕らと同じ感覚はある。辞めたいし辛いし楽しく生きたい、でももっと大切な事をちゃんと知ってて、だから社会から必要とされてる。それが大人として生きるって事なんだって、すみれさんから知った」