『ありがとう。私、私ねずっと
好きだった人がいるの。その人は
何でも出来て完璧で私なんか全然
かなわなくて。釣り合わないって
ことぐらい分かってた。


だけど、苦しいの。私にとって
すごく大切な人で、私っ、こんなにも
自分の気持ちが大きくなってるなんて
思ってなかった。


苦しくて苦しくてどうしたらいいか
分かんないの……』




「瀬奈…………………。
その人に、告白したの?」




『ううん。………してない。』




「じゃあどうして、」




『偶然、聞いちゃった。俺が、瀬奈
と付き合えるわけないって言ってるの。
それって、私みたいな普通な子が
付き合えるわけないって事でしょ。』




「瀬奈は普通かもしれない。でも
相手だって意外と普通かもしれないよ?
ちゃんと自分の気持ちその人に伝えた
方がいいと思う。」




『……………………………………。』




「あっ、ごめん。俺、お前の気持ち
ちゃんと考えずに勝手な事言って。
ホントにごめんっ。」




『違うの。私、勇矢くんが言った
こと正しいと思う。ちゃんと言わない
で落ち込んで、バカみたい……。
ありがとね、気が楽になった。』




「…っああ、頑張れよ!俺、また
いつでも話し聞くし相談して。」




『…どうして、そこまでしてくれる
の?どうしてそんなに優しいの?」



「俺は優しくないよ。でも瀬奈が
そう感じたならそれは瀬奈だから…
俺、言わないつもりだったけど
ごめん言わせて?」




『…何を?どういうこと?
でも、どうぞ。』




「っフ。……………俺、
瀬奈のこと、…………やっぱ
なんでもない。俺は泣いてるの
見てほっとけなかっただけだよ。」



ちょっと切なそうに勇矢くんは言った。




『やっぱり優しいじゃん、勇矢くん。』