「あっ、じゃあ俺戻るわ」


「うん、じゃね!」



ユカが笑顔で清瀬くんを見送る。


横を通る彼の姿を見ていられなくて、私はうつむいたまま、顔を伏せていた。


……お願い。


このまま通り過ぎて………。


私の、泣きそうな顔を、見ないで……っ。



「……っ藤田、マジでどうかした?」



だけど、通過したと思った清瀬くんが戻って来て私の肩に手を置く。


……なんでよ。

なんで放っておいてくれないのっ。


惑わさないでよ!


好きな人がいるくせに!!


ユカのことが、好きなくせに……!!



「触んないでっ!」



怒りがこみ上げて勢いよく清瀬くんの手を払いのけた瞬間、はっとして下げていた顔をあげた。


私ってば……なんてことを……っ。



「あ、悪りぃ……っ」



空中で泳いでいた手を清瀬くんがポケットに入れて苦笑い。


……そんな顔しないで……っ。


いつも笑顔で眩しい清瀬くんの顔を、歪ませてしまった罪悪感。