電車を降りてすぐ、隣の車両から出て来た見覚えのある姿に首を傾げた。
あの後ろ姿は……。
「清瀬くん?」
思わず口に出すと聞こえたのか彼がこちらに振り向いた。
途端に眠そうな顔がパアッと明るくなる。
まるで子犬のようだった。
「おはよう!藤田!」
「なんでいるの!?え、昨日駅前で別れたよね?」
「あー、うん。ここでいいって言われてなんか俺も同じ電車乗ってるって言いづらくて……」
ポリポリ頬を人差し指でかく彼に目を見開いた。
なにそれ……!
言ってくれればよかったのに……!
「知らなかった。同じ電車だったんだ」
「うん。俺は知ってたよ。たぶん藤田のひとつ前の駅から俺は乗ってる」
「へぇー、そうなんだぁ」