「ありがとう」
でもね、ユカ。
それは私も同じ気持ちなんだよ。
ユカが幸せなら私も嬉しいよ。
……うん。
怒涛のあの日から少し時間が経って素直にそう思えるようになった。
だから、私はライブには行かないよ。
大切なふたりが幸せになるなら。
***
「さよなら〜」
ついにいろいろあった1学期が終わった。
とうとう明日から夏休みだ。
花火大会と清瀬くんのライブまであと約一週間と少し。
心が痛みに慣れて、マヒしているみたいに穏やか。
「じゃあね、綾乃。夏休み遊ぼうね」
「うん、連絡するね」
ユカといつものように教室でさよならして私は廊下へ出た。
そしてやっぱり目が行くのは、友だちとはしゃぐ清瀬くんだ。
……頑張ってね、清瀬くん。
応援してるよ。
「藤田!」
その時私を呼び止める声。
進めていた足を止めた。
「ライブ、来いよ!絶対!」
「……っ……」
そんな笑顔でそんな残酷なこと言わないでほしい。
うつむきそうになる顔を無理やり動かして、笑顔にして見せた。
「行けたらね」
一言、そう言うと私は振り返らずに廊下を歩いた。
ごめんね、嘘ついて。