出来ることなら戻りたい。
清瀬くんを好きになる前に。
「おはよう、綾乃……って、大丈夫?顔色悪いよ?」
「おはよう、ユカ。うん、大丈夫。ちょっと寝不足なだけだから」
登校するとユカが驚いた顔をした。
そんなにひどい顔をしているんだろうか、私。
教室に入る前に鏡で確認すればよかった。
「それならいいけど……。あ、そういえばさ!太陽たちのバンド、夏休みにライブするらしいんだけど」
「……うん」
知ってるよ。
そのライブと追試がかぶって危機的状況なんでしょ。
「なんかね、サプライズがあるんだって。噂だと太陽が好きな子に告白するとか」
「……そうなんだ」
とうとう告白するんだ、清瀬くん。
あのラブレターの相手の女の子に。
「はい、これ!ライブのチケット、さっき太陽から預かって来た!」
「え?」
「私たちにも来てほしいって」
ユカが私に差し出したのは長方形のライブのチケット。
……あぁ、そっか。
清瀬くんの好きな子って、ユカだったよね。
そりゃチケット渡すよね。
告白の相手がユカだとあやしまれないように、友だちの私にも。