姫乃side

私は今まで自分のなかで恋愛を拒絶してきた。

なのに――――。

私は、夕凪姫乃(ユウナギヒメノ)
最近の私はおかしい。

「ひーめのちゃんっ‼」

原因は、こいつ。
平田智輝(ヒラタトモキ)

「何?」

私は少し睨みながら返す。

「冷たいなぁ。」

と言いながらも、笑っている。

「..何?って聞いてるんだけど?」

「今度、デートしない?」

「はぁ?何であんたなんかと。」

「何でって..俺が姫乃ちゃんのこと好きだからだけど。」

“ドキッ”

..まただ、なんか最近こいつに“好き”とか言われると、心臓がドキドキする。

「なっ、何それ..」

「姫乃ーーーー‼帰ろ‼」

そう言って走ってきたのは、
広森 千夏(ヒロモリチナツ)
とっても可愛くて、優しい。

「千夏‼」

「あっ..。私、お邪魔だった?」

なんて、聞いてくる。

「んなわけないでしょ‼
っていうか、山中くんと帰らないの?」

「うん。用事があるんだって。」

「へぇー。じゃあ、帰ろっか。」

「いやいやいや。私、一人で帰るから、二人で仲良く帰ってね?」

にっこり笑いながらそう言う千夏。
じょ、冗談じゃないっ‼

「えっ、ちょっと‼ち、千夏‼」

そんな私の声を無視して、走っていった。
嘘。
もしかして..?

「じゃあ、帰ろっか?」

そう言って笑う、平田君。
不覚にもドキッとした。

「なんで、私が平田君と帰んなきゃいけないの。」

「えー、だってさ、広森が帰れって言ってたじゃん。せっかくだし今日くらい一緒に帰ろーよ。ね?」

「嫌よ。」

そう言って、歩き出す。
好きじゃない。こんなやつ、好きじゃない。
それでもついてくる平田君。
ほんま、ウザイ。

「待ってよー。」

「ウザイ。」

「ひどっ。」

校門までそんな言い合いをしていると..

「あっ‼と、智輝くん‼」

え?と思いそちらを向くと..
うわ、可愛い。
ま、千夏にはかなわないわね。
ふと、平田君の顔を見ると、凄い驚いている..いや..悲しそうな目をしてる。

「な、ななか?」

「うん。久しぶりだね。」

「どうしたの?」

「あのとき、別れようって、いったくせに、あれなんだけど..」

元カノか。
こんな修羅場に巻き込まれたくない私はさっさと歩いていくと。

「待って。」

と、平田君に引き留められた。

「送ってくから。待ってよ。」

「嫌よ。私がいるとその子も話しにくいでしょ。」

「じゃあ、明日、駅前の喫茶店で。」

なんで、そうなるの..。
よりを戻すチャンスだっていうのに..。

「あっ、そっそうだよね。
急に来てごめんね。じゃあ、また明日ね。」

今にも泣きそうな顔でそう言いながら、走っていく、ななかという女の子。
それを悲しそうな目で見つめる平田君。

「..なんで追いかけないの。」

「だって、俺。姫乃ちゃんが好きだもん。」

「好きなんて。冗談で言わない方がいいわよ?あと、女の子を泣かせるなんてサイテーよ。」

「..ない。」

「え?今なんて?」

「だから‼冗談じゃないって言ってんの‼
俺、ほんとに姫乃ちゃんのこと、好きなんだ。」

「は?」

「信じてくれる?」

「..」

「俺、ほんとに好きだよ。」

「..」

「俺の..彼女になって下さい。」

「無理。」

「そこ即答?!もうちょっと考えてくれたっていいのに~‼」

「でもね..」

「?」

「恋愛対象にはなったかな?」

「もしかして、俺今まで..」

「えぇ。入ってなかった。」

「嘘だーーーー‼」

そう叫ぶ平田君。
おかしくて、少し笑った。
すると、

「笑った..」

「え?」

「姫乃ちゃんが‼笑ったー‼」

またしても、叫ぶ平田君。

「私だって人間よ?笑うときだってあるものよ?」

「可愛い‼」

「はっ?!」

顔が赤くなった気がした。

「え?照れてる?」

「ばっ‼照れてなんか..ないわよ‼」

「照れてんじゃん‼かわいーー‼」

「黙れ‼」

「こんな状況で黙るなんて無理でしょ‼」


こいつと話してると、心が暖かくなる。
笑えてきちゃって、元気が出る。
これが、恋。なのかな?


そのとき思った。
恋もなかなか、









悪くない――――。


ずっと掴まれていた手は、とっても


暖かかった。

番外編end