魔法の国の少女


いてもたってもいられなくなった私は、さっそく動いていた。

急いで、ゲームの電源を付ける。

前にやった時は、『始めから』と、『続きから』という選択しか無かった。

でも、今は、『中に入る』という選択が増えていた。

私は迷うこと無く、『中に入る』を、選択していた。

すると、その瞬間。

画面から、太陽の光のように、とてつもなく眩しい光が勢い良く飛び出してきた。

思わず目をつぶる。

その光が少し弱まったかと思い、目を開けると、目の前に、一人の女性がひっそりと立っていた。

光輝く、金色のドレスを身にまとい、黒くつややかな髪の毛を、ポニーテールに結んでいる。

なんとも、美しい女性だ。

年齢は20代前半位だろうか?

大人っぽい雰囲気がある。


そして、しばらくの沈黙が続いたあと、固く閉ざされたような彼女の口が、重く開いた。

「…私の名は。ティセラ。」

「…ッ!?」

「ゲーム界を、守る者。」

「ゲ、ゲーム界を…守る…?」

ど、どうすれば良いんだ?私は?

戸惑いを隠せず、アタフタしている私に、ティセラさんは続けた。

「ゲーム界に入りたくば、私の許可を得よ。」

「え、えっと…。」

いきなりの出来事に頭の中は大混雑。

一回大きく深呼吸して、自分を落ち着かせた。

すると、口から言葉がもれた。

「お父さんに、会いたい。」

さっきから呪文のように私の頭を駆け巡っていたこの言葉が、やっと形を表した。

「お父さんに会いたいから…。ゲーム界に、入れてください…っ!」

ティセラさんは、初めて表情を変えた。

ほんとに一瞬だけだったけれど。