翌朝、僕は普段より早く起きて、出かけた。
…気になるんだもん。
んで、もしおじいさんがいたら、少しでもあの手品?マジック?を見る時間が欲しいし。
 足早に、いつもの通りに向かう。

…いた!

でも、今日は一人じゃない。
2、3人の人が、おじいさんの前に立って、おじいさんの手元を凝視してる。
スーツ姿の若いサラリーマン。
高校生らしき制服のお姉さん。
大学生かな?フリーターかな?若いお兄さん。
みんな、おじいさんの前から動かない。
いくら人通りの少ない道だからって、皆無じゃない。
きっと、昨日の僕と同じように気になった人達だろう。
その輪に混じって、僕もおじいさんを見る事にした。
おじいさんの足元にあるガラクタは、昨日よりガラクタじゃなくなってる。
心なしか、おじいさんの服も、少しボロボロじゃなくなってる気がする。
…そんなワケないか…

僕が改めておじいさんを見た時、おじいさんと目が合った。

「ぼうや、今日は違うものを見せてあげよう」
おじいさんはそう言うと、右手に持ったモノをじっと見つめた。
次の瞬間、右手にあったハズのモノは、左手にあった。

…なんで…?
右手の手のひらに乗ってたのに。
両手は広げてあった。
1メートルくらいは離れてるハズ。
左手は動かしてない。
…どっから?どうやって?

僕は、一緒に見てた3人を見上げた。
でも、彼らも僕と同じように驚愕してるだけ。
高校生のお姉さんだけが、
「すっごぉ~いっ」
と飛び跳ねながら拍手してた。

僕は怖くなって、駆け出してしまった。