「おい、名前?」

 え!?私?

「鏡野です、鏡野アリス」

「鏡野、危ないからあのベンチのネットの後ろにいろよ」

 と、さっさと部員の元へと行ってしまった。
 いい人なんだか横暴なんだか。


 うーん。やっぱり彼はいない。絵を描かないと苦情を言われそうなんで、描いてるけど全く力が入らない。
 でも、このネット、多分練習用なんだろうけど、何度もボールが飛んできた。そりゃあ、テニスコートはフェンスで囲ってあるもんね。中は危ない。しかも、私は絵を描いてるから、どうしても絵に集中するから、よけるのは到底無理だし、あの部長ナイスだね。


 さらっと描いて今日は帰ろうと思ってたけど、言い出せず最後まで残る羽目に。声かけづらいんだもん。
 明日からどうしよう。いいのが描けないとどこかで断るしかないか。それにしても、あの彼はどこいったの?