耳の中でこだまして聞こえる甲高い声に苛立ちを隠せない。
どうやったら、普段出さないような高音を出すのだろう。

梅雨の時期になり、筋トレメインの練習をこなす垣本裕太。
グラウンドは叩きつける豪雨で散々である。
水溜まりができれば土で補修するのだが、梅雨の時期はその作業が毎日のように繰り返される。
少しでも雨が止めば練習したがる顧問のやる気が、裕太には皆目検討もつかないのだった。

他の部員だってそうだ。

こんな弱小チーム、と常々思っている。

それ故、野球部は顧問とのモチベーションの違いが激しく、だから、「どうせ」と言う逃げ道の言葉しか脳を支配しなかった。

甲高い声に劣る野球部の掛け声。
どちらかと言うと、甲高い声にうんざりしているから劣っているのだと、説明した方が良いほど、体育館での筋トレに支障をきたすものだった。

野球部はコート半面を使い、もう一半面には仕切り網越しに劣らせるだけの高音を出すバレー部。

そして、裕太はその鬱陶しい声に思わず、

「ヘドが出る」

悪態をついてしまった。