放課後、トイレから出ると、織子ちゃんと市山さんが話しているのを見た。

織子ちゃんはいつもの優しい笑顔、市山さんはいつもとは似つかない楽しそうな笑顔。


気づかれない位置から二人の会話を聞くと、どうやら織子ちゃんが市山さんを庇ったそうだ。

流石、織子ちゃん。


二人は別れたあと、別々の方向に歩き出した。

織子ちゃんはいつもの私との待ち合わせ場所へ。

市山さんは教室へ。忘れ物でもしたんだろう。

私も教室へ向かう。



「あ…ゆ、雪ちゃん…」
「さっき織子ちゃんと話してたよね」

「うん。凄くいい人…。た、確か、雪ちゃんと付き合ってるんだよね…?みんなは女の子同士なんて変って言うみたいだけど…私はいいと思う…織子ちゃん、いい人だから、好きになるのも分かるっていうか」

幸せそうな顔で語り出した。

「市山さんを庇ったせいで織子ちゃんまでいじめられたらどうするの?」

「え…?」

「そんな事も考えずに織子ちゃんと話してたの?庇ってくれた織子ちゃんが巻き込まれても平気なの?友達ができればそれでいいの?自分勝手な生き方しないで。市山さんの友達になってくれる人なんていないと思うよ。嫌われ者と親しくしてまで嫌われ者になりたい人なんかいない。織子ちゃんに近づかないで。織子ちゃんは私だけのものだから」

自分でも何を言っているかわからなかったが、間違った事は言っていないと思った。

市山さんは泣き出し、教室から走って出ていった。
私はよく分からない気分のまま、教室を出て、織子ちゃんと合流。
いつもと変わらない、他愛ないけど愛のある会話をしながら帰る。私は幸せだ。



不幸な市山さんはそれ以来、学校に来なくなってしまったけど。