「今日はどこに行きたい?」
織子ちゃんとのデート。行先はいつも私に決めさせてくれる。
「織子ちゃんは行きたい所、無いの?」
気を使った訳じゃなく、たまには織子ちゃんが行きたい所に行ってみたい。
「うーん、じゃあ…二丁目に新しく出来た小物屋さん。いい?雪も気に入ると思うけど」
二丁目に新しく出来た小物屋さん。
可愛くて素朴な、私好みの小物や雑貨がいっぱいだった。
「可愛い!」
「でしょ?気が合うねえ」
気が合う、という何気ない一言、何でも無いことが嬉しかった。
私と織子ちゃんは人形を1つずつ買った。
小さなドレスに身を包んだ、愛らしい人形。
店を出ると、織子ちゃんが私に何か渡してきた。
それは、香水。
「あげる。さっき買ったの」
いつもと変わらず織子ちゃんは柔らかく笑ったが、私は戸惑った。
「な、なんで?可愛いし嬉しいけど…」
「付き合ってくれたお礼。受け取ってくれる?」
「…うん。ありがとう!」
もう夜の7時近い時間。
3月になったがまだ春の訪れはあまり感じない。
暗くなるのが早く、いつの間に夕焼けの時間が終わったのか
空には星が輝き始めていた。
二人で歩く帰り道、あと五時間もすれば今日が終わるけど
なんだか良い1日になる気がした。

