バレンタイン前日の夕方。
クッキーの生地が完成!
エプロンを汚しながら必死に頑張ったかいあって、何とかマトモに出来たようだ。
あとは型をとって焼くだけだから、温度さえ間違えなければ大丈夫だ。

でも焼く前に、大事な大事な最後の仕上げ。
隠し味を入れなくちゃ。
隠し味という、私の愛を…

棚から包丁を取りだし、手首に軽く当てる。

「織子ちゃん、気づいてくれるかな」

ポタポタと垂れる私の血液で、チョコレート色の生地が赤くなってゆく。
あまり沢山入れると味が変になってしまうかもしれないので、少量にしとこう。

予め用意しておいた包帯を手首に巻き、生地をもう一度混ぜる。

チョコレート色と赤が混ざって、綺麗なマーブルになった。
それを型でハート型にして、焼く。

「ちょっといっぱい作りすぎちゃったかな…」

焼き上がりが楽しみだ。
早く織子ちゃんに食べてもらいたい。
私のクッキーを。





焼き上がったクッキーは、香ばしい香りがした。
少し黒いけど、それは血の色のはず。焦げた訳じゃないから大丈夫。

買っておいた可愛い袋にクッキーを包んで、カバンに入れた。

明日が楽しみだ。