見慣れた風景。
まだ冬の面影を残した澄んだ空が、雨が降るのか、結構早く流れていく雲が、鳥の囀ずりが、無味の空気が、今私と織子ちゃんが立ってる地面が

一瞬で全部壊れた。

私の世界が音を立て始めた。
地鳴りのような低くて何か恐ろしいことの始まりを予感させる音。



「…え、」

「雪は私と居るべきじゃない。雪は普通じゃないんだよ」


「…なんで?」

「…雪は」

「なんでそんなこと言うの?私は織子ちゃんが大好きなのに。周りの誰に何て言われても織子ちゃんを愛していけるよ。なのになんで?織子ちゃんも私のこと愛してるのになんで?そんなこと言わないで。大丈夫だよ、女の子同士でも、ねえ、」


「雪」

織子ちゃんが私を抱きしめる。
体の感覚がなくてよくわからない。
何もわからない。


「雪は大丈夫じゃない。いろんな人を傷つけてしまう。もう見てられない。私は雪のことがよく分からないの。長い間ずっといるのに。雪の愛の形が見えないの。理解できないの本当は…ごめんね。本当ごめん。私のこと愛してくれてるの、知ってるよ。でも、ごめん。別れなきゃ。私達、二人ともダメになってしまう」


「なんで?わからないよ…やだよ。別れたくないよ。別れるなんて嫌だよ。死ぬまで一緒にいたいよ。…泣かないで織子ちゃん。本当は織子ちゃんも別れたくないんでしょ?ねえ、そうだって言ってよ。私おかしくなりそう。ねえお願い、嘘だよって言って。織子ちゃんの泣き顔なんか見たくない。二人が幸せでいるためには、二人が一緒にいなきゃダメなんだよ。ねえ、やだよ…」


景色から色が消えていく。

形も消えてしまい、世界の何もかもが消えた。


残ったのは泣きながら私を抱きしめる織子ちゃんだけ。