夜空に浮かぶ明るい光。
 光の点滅が川辺を漂う。

「……お兄ちゃん、あれはなに……」

「きっと……ヘイケホタルだよ……」

 ホタルの生存期間はとても短く、僅かしか生きられない。

 その短い期間に……

 オスはメスに美しい光を放ちながら、求愛をする。

 6月から9月に見られるヘイケホタルは、ゲンジホタルよりも光は弱い。

 その光は儚くて、揺れるような朧気な光。

 まるで、僕みたいだ。

「お兄ちゃん……水が…飲みたい」

 その声を最後に、女の子の声は聞こえなくなった。


 ――もしも、生まれ変われるなら……

 僕はヘイケホタルになりたい。

 たとえ、僅かしか生きられない短い命でも……

 その短い生涯を、大好きな君と一緒に過ごしたいから……。