コンビニの前にしゃがみ込み、2人でバニラアイスを食べる。

「汗臭っ」

「ねねこそ、汗臭っ」

 胴着を着ている桃弥。
 ちょっと汗臭い桃弥。
 互いの臭いをクンクン嗅ぎ合う。

 今まで平気だったのに、最近は桃弥が胴着に顔を近づけるとドキッとする。

「やめてよ。セクハラ、変態」

「あほ、誰が変態だよ。ねねもやってんじゃん」

 小学生の頃からずっと一緒。
 私はいつも桃弥の後を追い掛けていた。

 中学生になっても、登下校は桃弥といつも一緒。
 バレンタインはチョコバニラアイスで、ホワイトデーは嫌がらせのように、アンパンだった。

 サッカー部に入った桃弥はモテ期に突入し、隣家に住む私は宅配業者みたいに女子からラブレターやプレゼントを預かり、桃弥に配達する。桃弥はそれを平然と受け取る。

 高校生になり、急に男っぽくなった桃弥。でも、私達の関係は小学生の頃と何も変わらない。

 私、いつまで桃弥の隣にいられるのかな。隣の席を他の女子に譲るのは、ちょっと寂しい。

 でも、自分の気持ちを素直に話したことはない。

 桃弥にとって私は、隣に住む幼なじみに過ぎないから。

 ――2人で自転車を走らせ、自宅に戻る。
 全速力で走る意地悪な桃弥を、私も全速力で追い掛ける。

 桃弥の家の敷地で蹲っている人影を見つけた。

「誰だ!」

 不審者の姿に、桃弥が門の横に置いてあった箒を掴み、竹刀みたいに構える。

 蹲っていた人影がスッと立ち上がり、横顔が外灯に照らされた。そこにいたのは、私達と同じくらいの年齢の男子だった。彼は少し薄汚れた白いシャツと黒いズボンを着用していたが、この周辺の制服ではなかった。

「お前、誰だよ!」

 彼は怯えたような眼差しをこちらに向けた。
 髪型はスポーツ刈り、素足に黒い鼻緒の下駄を履いている。今どきの若者とは異なり、やや異質だが清楚で真面目な印象。

 とても泥棒には見えない。