あの日、あの時、君といたモノクロームの夏。

「ねね、本当に同じ部屋でいいのか?」

「うん。1人になるのが怖いの。自分だけ別の時代にタイムスリップしたらどうしようって、考えただけで不安になる。ももが傍にいてくれたら、どこにタイムスリップしても怖くない」

「わかった。ねねを1人にしないよ。早く風呂に入ってこい」

「うん」

 脱衣場に行くと瑠美お姉ちゃんが新しい下着とパジャマを用意してくれた。

「胸のサイズは私と同じくらいね。母は巨乳なのに、どうしてそこが似なかったのか娘としては不満だけど、これでよければ新品だからどうぞ使って」

 瑠美お姉ちゃんの言葉に思わず口元が緩む。確かに私も、スタイルには自信はない。

「ありがとうございます。私も同感です」

「だよね」

 瑠美お姉ちゃんは面白くて話しやすい。
 やっぱり、大好き。

「まだお父さんの隠し子説は消えてないけぇね。私達体型も顔もなんとなく似てるし、異母姉妹かもしれんし、仲良くしようね」

「……ち、違いますよ。おじい……、私はおじさんの隠し子ではありません」

「だといいけど。綾姉ちゃんが結婚して、隠し子騒動発覚で両親が離婚だなんて勘弁して欲しいからね」

「ごめんなさい。私達、お邪魔ですよね」

「社宅は狭いから、居住空間を支配されると確かに迷惑だけど。綾姉ちゃんがいなくなってみんな寂しがってるから、賑やかでいいんじゃない。けど2人ともまだ16歳だよね。不登校とか、家出とかは賛成できんよ。親を心配させたらダメじゃけぇね。一晩寝たら、さっさと家に帰りんさい。じゃあおやすみなさい」

「おやすみなさい……」

 瑠美お姉ちゃんの言ってることは正論だ。
 もし私が突然消えてしまったのなら、母はきっと心配してるだろう……。

 私達、どうなるのかな……。

 久しぶりにゆっくり湯船に浸かった私。
 戦時中は空襲が怖くてゆっくりお風呂に入れなかった。
 湯気の向こうに浮かぶのは時正君の笑顔と、お婆ちゃんの優しい笑顔。2人の安否が気になって仕方がない。

 お風呂から出ると、リビングには二組の布団。
 思春期の私には、ちょっと抵抗がある。でも、同じ部屋で寝ると言い出したのは私だ。

「ねね、布団ふかふかだよ。シーツも新品だし。鉄道寮の布団はペタンコだったから、超気持ちいいな」

 桃弥君は無邪気にハシャイでいる。
 子供の頃、互いの家に泊まり、同じ布団で寝ていたことを思い出す。

「もも、手を繋いで寝ていい?」

「手を?」

「うん。離れるのが怖くて……」

「いいよ。今夜は手を繋いで寝よう」

 布団に寝ころび、2人で手を繋ぐ。
 桃弥君の手の温もりに包まれ、私達は深い眠りについた。

 ◇

 ――夢の中で……
 眩い光を感じた。

 その光は……空を脅かし……
 強烈な光を放ち……落ちてくる。

 巨大な閃光……。

 体が光の中に吸い込まれる。
 叫び声を上げ、助けを求めたいのに、恐怖から声が出ない。