あの日、あの時、君といたモノクロームの夏。

 ◇◇

 ――ここは……どこ……?

 桃弥君……

 もも…………

『ね……ね……』

『…………ねね』

「ねね!」

 重い瞼を開くと、鼻先が触れ合いそうな至近距離に桃弥君の心配そうな眼差しががあった。

 トクンと鼓動が跳ね、思わず小さな悲鳴を上げる。

「きゃっ、もも……。私達どうなったの?ここは……どこ?」

「ねね、俺のこと思い出したのか?」

 桃弥君との過去は、まだ思い出せない。覚えているのは、第二次世界大戦の広島で桃弥君に出逢ったこと。

「……ごめんなさい。でも……家族のことは思い出した。それに時正君や紘一さんのことも覚えてる」

「タイムスリップで俺のことは忘れてしまったのに、時正や紘一さんのことは覚えているのか。まじでへこむ。俺達幼なじみなんだよ。ずっと傍にいたのに……そこ忘れるかな」

「……ごめんなさい」

「もういいよ。ねねのせいじゃない。必ず、ねねは俺のことを思い出す。いや、俺が思い出させてやる」

 自信満々な桃弥君、その意地悪な笑みはどこか懐かしい。桃弥君は私にとって一番大切な人だった……そんな気がする。

「ねね、俺達またタイムスリップしたみたいだよ」

「タイムスリップ……?時正君や紘一さんは……?お祖父ちゃん(紘一)はどうなったの……!?」

 原爆投下の広島から、私達はまたタイムスリップした……。

 私達は……助かったんだ……。

 核兵器の恐怖から解放されたと同時に、様々な不安が津波のように押し寄せる。

「もも、みんなは……!?みんなはどうなったの」

「わからない。鉄道寮のみんながどうなったのか……俺にもわからない。ただわかっていることは、俺達はまた違う時代に来てしまったということだ」

「えっ……?違う……時代?」

「俺達はまだ過去にいるみたいだ。どうやらここは結婚式場みたいだよ」

「結婚式場?」

 現世に戻れたと思っていた。
 でも……それは違っていた。

「花嫁衣装の女性と紋付袴の男性が廊下を歩いていた」

「花嫁衣装……?」

「こっち、こっち」

 桃弥君は私の手を掴んだ。

 窓の外には青空が広がっている。
 戦時中の広島とは異なり、穏やかな晴天。

 私達はいつの時代に迷い込んでしまったのだろう……。

 夢のようなこの世界に、いつまで翻弄され続けるのだろう……。

 神前式の挙式会場には、『榮倉家、守田家、挙式会場』と書かれていた。

「榮倉家……?守田家って……」

「ご親族の方ですか?こちらへどうぞ」

 挙式会場のドアの前にいたスタッフが、戸惑う私達を会場内へと案内する。両家の親族は私達に目もくれない。みんな新郎新婦に視線を向けている。

 私達はスタッフに案内され、守田家の一番後列に並んだ。