「これは産業奨励館じゃ」
「産業奨励館?なしてこがあに壊れとるんじゃ。わしは昨日この目で見た。産業奨励館はこがあに壊れとらんで」
「米軍が落とした原子爆弾で破壊されたんじゃ。この新聞に日本が連合国軍に敗戦し、終戦したことが書いてある」
みんなが一斉に身を乗り出し、『貸せ』と言わんばかりに新聞に無数の手が伸びる。
「新聞は今からみんなに回すけぇ座って読んでくれ。桃弥君、ここに来てくれんね」
皆は渋々席に着く。食堂の後ろにいた俺は、紘一に呼ばれ前に行く。好奇な視線、戦争を体験していない俺が、果たしてみんなを納得させるだけの説明が出来るのだろうか。
「桃弥君、これから広島に何が起きるかみんなに話して欲しい」
紘一の言葉に、俺は深く頷く。食堂にいた若者の顔を1人ずつ見渡した。
「峰岸桃弥です。俺は2016年の未来からここにタイムスリップしました。突然そんな話をしても、きっと皆さんは信じられないでしょう。俺も時正が2016年にタイムスリップした時、正直信じられなかったから」
「時正が未来にタイムスリップしたと?なんじゃそれ。此奴は頭がいかれとるぞ」
食堂にいた者達が、バカにしたように嘲笑う。
俺は携帯電話を取り出し、5月28日に撮影した画像を開き、携帯電話を皆に回すようにと軍士に手渡す。
「そこに写っているのは産業奨励館、俺たちの時代では原爆ドームと呼ばれています。“1945年8月5日深夜に2回空襲警報が発令され、8月6日朝7時9分にも空襲警報が発令されるが、31分には解除”されます。みんなには6日までに広島から退避してほしいけど、それが不可能なら空襲警報が解除されてもずっと防空壕に避難していて下さい。なぜなら8時15分にアメリカは広島の中島地区に原爆を投下するからです」
「はあ?原爆?ずっと防空壕におれと?作業があるのに、わしらだけそがあなことはできん」
「そーだ!そーだ!」
寮生は拳を振り上げ、俺を威嚇した。
「作業より自分の命を優先して欲しい。戸外で作業していたら大量の放射能を浴びてしまうんだ」
「放射能?なんじゃそれは?」
「こいつはやっぱり米軍の回し者じゃ!みんな、騙されるな!」
「警察に突き出せ!」
俺は誹謗中傷に負けることなく、話を続けた。
俺には時正や紘一、軍士がついている。今、負けるわけにはいかない。
「原爆の威力はみんなが思っているよりも、破壊力があるんだ。第二次世界大戦の史実を記録した資料によると、“原爆の熱線には強烈な赤外線と紫外線、放射能が含まれていて、600メートル離れたところでも熱線の温度は2000度以上に達した”とも言われている」
「2000度……」
ざわざわと室内がざわつく。
「原爆投下により、戸外にいた者は“重度の火傷を負い、爆風により破壊されたガラス片が全身に突き刺さり、重傷を負った大半の人は死亡した。急性放射能症で亡くなる人も相次いだ”。たった一発の原子爆弾で何万人もの人が死ぬんだ。このままだと、君たちも原爆の犠牲になるんだよ!」
ほんの一瞬、沈黙が流れた。
明らかに、その目は怯えている。
「そ、そがあな話をするな!わしらは米軍の脅しにはのらん!」
「産業奨励館?なしてこがあに壊れとるんじゃ。わしは昨日この目で見た。産業奨励館はこがあに壊れとらんで」
「米軍が落とした原子爆弾で破壊されたんじゃ。この新聞に日本が連合国軍に敗戦し、終戦したことが書いてある」
みんなが一斉に身を乗り出し、『貸せ』と言わんばかりに新聞に無数の手が伸びる。
「新聞は今からみんなに回すけぇ座って読んでくれ。桃弥君、ここに来てくれんね」
皆は渋々席に着く。食堂の後ろにいた俺は、紘一に呼ばれ前に行く。好奇な視線、戦争を体験していない俺が、果たしてみんなを納得させるだけの説明が出来るのだろうか。
「桃弥君、これから広島に何が起きるかみんなに話して欲しい」
紘一の言葉に、俺は深く頷く。食堂にいた若者の顔を1人ずつ見渡した。
「峰岸桃弥です。俺は2016年の未来からここにタイムスリップしました。突然そんな話をしても、きっと皆さんは信じられないでしょう。俺も時正が2016年にタイムスリップした時、正直信じられなかったから」
「時正が未来にタイムスリップしたと?なんじゃそれ。此奴は頭がいかれとるぞ」
食堂にいた者達が、バカにしたように嘲笑う。
俺は携帯電話を取り出し、5月28日に撮影した画像を開き、携帯電話を皆に回すようにと軍士に手渡す。
「そこに写っているのは産業奨励館、俺たちの時代では原爆ドームと呼ばれています。“1945年8月5日深夜に2回空襲警報が発令され、8月6日朝7時9分にも空襲警報が発令されるが、31分には解除”されます。みんなには6日までに広島から退避してほしいけど、それが不可能なら空襲警報が解除されてもずっと防空壕に避難していて下さい。なぜなら8時15分にアメリカは広島の中島地区に原爆を投下するからです」
「はあ?原爆?ずっと防空壕におれと?作業があるのに、わしらだけそがあなことはできん」
「そーだ!そーだ!」
寮生は拳を振り上げ、俺を威嚇した。
「作業より自分の命を優先して欲しい。戸外で作業していたら大量の放射能を浴びてしまうんだ」
「放射能?なんじゃそれは?」
「こいつはやっぱり米軍の回し者じゃ!みんな、騙されるな!」
「警察に突き出せ!」
俺は誹謗中傷に負けることなく、話を続けた。
俺には時正や紘一、軍士がついている。今、負けるわけにはいかない。
「原爆の威力はみんなが思っているよりも、破壊力があるんだ。第二次世界大戦の史実を記録した資料によると、“原爆の熱線には強烈な赤外線と紫外線、放射能が含まれていて、600メートル離れたところでも熱線の温度は2000度以上に達した”とも言われている」
「2000度……」
ざわざわと室内がざわつく。
「原爆投下により、戸外にいた者は“重度の火傷を負い、爆風により破壊されたガラス片が全身に突き刺さり、重傷を負った大半の人は死亡した。急性放射能症で亡くなる人も相次いだ”。たった一発の原子爆弾で何万人もの人が死ぬんだ。このままだと、君たちも原爆の犠牲になるんだよ!」
ほんの一瞬、沈黙が流れた。
明らかに、その目は怯えている。
「そ、そがあな話をするな!わしらは米軍の脅しにはのらん!」

